虫歯になりやすい人・・・

虫歯になりやすい人・・・

歯周病にかかりやすい年齢や条件があるように、虫歯にもかかりやすい年齢、かかりやすい人、かかりやすい部位があり、乳歯が生えてから小学校の低学年ぐらいまでの10年は、虫歯になりやすい年齢です。

これに対して、壮年期に新しい虫歯ができるのはめずらしいことです。

虫歯は、虫歯の原因菌と、その原因菌が酸をつくるのに必要な糖、そして虫歯になりやすい歯の三つの条件が重なったときにはじめて生じます。

乳歯が生えてから永久歯が生えそろうまでの期間は、歯の表面が未成熟で、しかも飲食の回数がどうしても多い時期ですから一般に虫歯にかかりやすいのです。

口のなかに虫歯の原因菌がすでに感染している場合、糖が口のなかに入ると細菌は酸をつくり、プラークは酸性に傾きます。

通常、飲食が終わって30分ぐらいの時間がたつと、唾液の能力によってプラークは中和され、歯の表面から奪われたリンやカルシウムは、ふたたび歯の表面に沈着します。

プラークの下では、リンやカルシウムが奪われたり、このように再度沈着したりというプロセスがくり返されています。

たえず飲食物が口のなかにあるような場合、たとえば、のどが痛くてのどアメを四六時中なめている場合には、プラークは酸をつくりつづけます。

唾液が働いて溶けた表面をおぎなう時間がないのです。

唾液の分泌量が少ない人の場合にも、同じような問題があり、唾液は分泌量が少ないと、酸を中和する能力(緩衝能力)も劣ります。

このため、飲食のあとに十分な時間があっても、唾液が働いて溶けた表面を十分回復することができないか、あるいは、十分に中和することができません。

このような場合には、食生活がそれほど乱れていなくても、新しい虫歯をつくることがあります。

唾液の分泌の少ない人は、つい清涼飲料水などを多めにとりますので、どうしても虫歯になりやすいのです。

歯周病の経験のある人、歯を削って詰めたりかぶせた歯のある人は、さらに虫歯にかかりやすくなります。

歯周病が治って、歯と歯ぐきのあいだのミゾが浅くなったときに、歯は長くなったように見えます。

これは、本来、歯の根であった部分が歯肉の上にむき出しになってしまったからです。

この歯の根の部分は、一見、かたい歯と同じように見えますが、細長い細胞のまわりにリンやカルシウムが結晶状にかたまってできた組織なのです。

乳歯や生えたばかりの永久歯よりも虫歯になりやすい組織ですから、虫歯になりやすい条件のひとつがグンと大きくなるのです。

歯を削ってかぶせる治療のしてあるところは、さらに条件が悪いと考えたほうがよいかもしれません。

どんなに精密な治療をしたとしても、歯と金属とのあいだにはミクロのすき間があります。

削られた面は、一般に歯の根と同じ虫歯になりやすい組織です。

しかも、かぶせる治療がしてある分だけ、その治療のミクロのすき間に細菌が停滞して増殖しやすいのです。

虫歯になる場所は、かなり限定されているのです。

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虫歯を防ぐ方法とは・・・

大人の大きな虫歯は、以前に歯を削って治療した部分に生じますが、削って金属をかぶせた歯でも、全部が一度に虫歯になるわけではありません。

かぶせた金属をはずすと片側は虫歯、片側は削ったままの歯がむき出しです。

たとえば、下の奥歯であれば、金属の下の虫歯は、舌の側ではなくほおの側からはじまります。

これは、唾液の流れと関係があります。

唾液は、おもに舌の下(舌下腺、顎下腺)とほおの内側(耳下腺)から分泌されますが、流れて、たまって飲み込まれるため、唾液の恩恵を受けやすい場所とそうでない場所があります。

下の奥歯のほおの側は、舌の側とくらべると唾液の恩恵を受けることが少ない場所なのです。

子どものころから、虫歯の経験がほとんどない人は、虫歯の原因菌をもっていないか、非常に唾液の能力の高い人ですから、別段の注意はいりません。

注意しなければならないのは、歯周病で歯ぐきが少し下がってしまった人、削って詰める治療やかぶせたところのある人です。

このような人の場合、唾液を調べてみる必要があります。

唾液の量と質に問題がないとすれば、食生活に問題がないかぎりそれほど心配はありません。

ただし、ここでいう食生活は、食事のことよりも、間食やジュースなどの飲料、それも量よりも回数が問題です。

のどアメをなめるくせのある人や、トラックの運転手さんで、缶コーヒーや缶ジュースをいつも口にしている人です。

大人の虫歯の人を調べてみると、このような特徴的な飲食習慣があぶり出されてきます。

これは、その習慣を変えてもらう以外によい予防法はありません。

居眠り運転防止には缶コーヒーでなく、緑茶でも用は足りるのです。

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大人の虫歯は唾液に問題がある・・・

唾液の分泌量や酸を中和する能力が劣っているような人が、大人の虫歯の最大の原因になります。

唾液の分泌が少なくなる原因には、唾液腺の障害のほか、頭頸部へのⅩ線照射のために唾液腺が障害を受けている人、入れ歯が合わないために、よくかめない人などさまざまな原因が考えられますが、もっとも多いのは、薬の副作用です。

壮年期以降、女性の場合は、更年期からさまざまな薬を常用することが多くなります。

じつは、その薬の多くに唾液の分泌を抑制してしまう作用があります。

肌のかゆみや鼻炎に用いられる抗ヒスタミン薬、成人の気管支喘息に用いられる抗コリン薬や気管支拡張薬、高血圧症などに用いられる利尿薬、降圧薬、更年期障害に対してひんばんに処方される抗うつ薬、骨粗髭症治療薬など、その数は非常に多いのです。

これらの薬物は、おもに慢性疾患に用いられるため、何カ月、何年にもわたって服用されている例が少なくありません。

どうしても必要な薬物で代わりのものがなければ仕方ないのですが、まず、その薬物が、現在、どうしても必要かどうか、必要な場合には、唾液分泌抑制の副作用が少ない薬はないかどうかを内科医と相談する必要があります。

虫歯にかかりやすい問題がない人は、フッ化物の入った歯みがき剤やフッ素入りのジェルを1日1回、就寝前に使うことで、大人の場合には十分虫歯を防ぐことができます。

唾液の問題や歯の根が露出している問題がある人の場合は、この回数を1日2回にするようにします。

高齢者の場合には、多かれ少なかれ、歯の根が露出してきます。

また、飲食の回数がどうしても増えますし、薬物の副作用も多くなります。

このため、フッ化物の入った歯みがき剤を1日2回使用するようにします。

フッ化物の入った歯みがき剤は、そのような表示(フッ素入り)があるのですぐわかります。

その使用方法は、ふつうのブラッシングの後、口をすすぎ、フッ素入りジェルかフッ素入り歯みがき剤を歯ブラシにつけて、歯をみがきます。

十分みがいたら歯みがき剤を吐き出し、水で口をすすがないようにします。

このためには、味のうすい、泡の立ちにくいものが使いやすいです。

どうしても水ですすがないと口が気持ち悪いという人は、少量の水で長時間かけてすすぎます。

また、大人になってしまってからでは間に合わないのですが、虫歯を予防するいちばん確実な方法は、生えはじめの子どものころに永久歯を一本も虫歯にしないことです。

永久歯の生えはじめの歯の質の弱い時期を上手にのりこえれば、永久歯の虫歯ゼロを達成することはそれほどむずかしいことではありません。

いったん虫歯になって歯を削ってしまうと、そこは、非常に虫歯にかかりやすい部分になります。

虫歯を治したつもりで、虫歯の元をつくっているのです。

治療をした歯は、大人になって必ず治療をくり返すことになります。

そして、かぶせたりつないだりした歯は、歯周病にとてもかかりやすくなります。

このため、永久歯の生えはじめの六歳ぐらいから小学生の年代を通して、虫歯をつくらないことが一生の健康のために重要です。

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