肝機能を改善する食事・・・
肝臓を守るには、栄養バランスのよい食事をとることが大切で、栄養バランスのよい食事とは、いろいろな栄養素を持つ食材をかたよらずに、適切な量とれる食事のことです。
人間の体は、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素が必要です。
まずは、これらの栄養素の働き、肝臓で果たす役割、多く含まれる食品を知っておきます。
食品にはいろいろな栄養素が異なる割合で含まれているため、毎日食べる食事から、各栄養素の量を割り出すことは、むずかしいものです。
そこで、バランスよく食べる最も手軽な方法は、多種類の食品をまんべんなく食べることです。
毎日の食生活では、1日20~25種類ぐらいを目標にします。
これはけっして無理な目標ではありません。
エネルギー源となる炭水化物やタンパク質、脂質は、ごはん、肉、魚、油など、目で見て量も把握しやすいので、毎日の食卓に欠かさないようにすることは簡単です。
微量でも体(肝臓)に欠かせないビタミンやミネラルは、多種類の野菜や豆類、魚介類、果物などからとれば補うことができます。
こういったバランスのよい食事をとるのに、最も適した献立は、実は和食なのです。
主食のごはんに、主になるおかず(主菜)と、副菜が1~2品と、汁物がつくという伝統的な和食の構成は、必要な栄養素をバランスよくとるのに、最もわかりやすい方法です。
主食のごはんで炭水化物を摂ります。
主菜の肉や魚でタンパク質を摂ります。
副菜の野菜や海藻などからいろいろなビタミン、ミネラルを摂ります。
これで自然に5大栄養素を偏りなくとることができます。
また、塩分の摂り過ぎは、汁物を1日1食にすることで防止することができます。
また、単品の料理を作る時間しかないときは肉、野菜、魚、卵など、できるだけたくさんの食材を使うことによって、栄養のバランスをとれるように工夫します。
外食をするときは、どんぶり物やカレーライスなどの単品でなく、意識して定食を選びます。
カレーライスが食べたい思った時、1食ぐらい食べるのはよく、食事には精神的な満足感も大切です。
おいしいと気持ちが満足すれば、消化が高まることもあります。
しかし、もし昼食をカレーライスですませたなら、その日の夜と、次の日の朝は、5つの栄養素のうちで足りなかったものを補えるバランス献立にして調整します。
たとえば、昼がカレーライスだけだったなら、夜はタンパク質と野菜を豊富にとるのです。
また、食事をとる時間は、1日の生体リズムをつくる大きな要素です。
消化の働きが自律神経系によってコントロールされているからです。
自律神経は、意志でコントロールできない神経で、消化、吸収、代謝などをコントロールして、体をつねに一定の状態に保つ役割を果たしています。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、お互いに働いています。
交感神経は人体が急激な変化に対応する際に働きます。
呼吸や心臓の働きを高め、消化活動を抑制します。
おもに昼間の活動時に優位になります。
副交感神経は体を平穏な状態に保ちます。
消化や代謝を促進し、体に栄養を蓄えるように作用します。
おもに夜の安静時に優位になります。
食事と睡眠は、交感神経と副交感神経の交代と、生体リズムに関係しています。
朝、食事をとって血糖値を上げれば、体はスムーズに昼間の態勢へと移行できます。
逆に夜、遅い時間に食事をとると、胃腸での消化活動に時間がかかり、スムーズに睡眠に入ることができません。
ですから、夕食はなるべく睡眠の3時間以上前にすませたほうがいいのです。
特に肉や、脂質の多いメニューは遅い時間には避けるようにします。
肝臓は食事からとった栄養素を体に使いやすい形につくりかえて、貯蔵したり、血液に送り出したりしています。
その働きは、自律神経系に支配されていますから、不規則な食事によって生体リズムが乱れると、肝臓の代謝にも悪影響を及ぼします。
せっかくとった栄養素を有効に活用できなくなるのです。
就寝と起床の睡眠リズムや食事時間の乱れは、過労や不眠など、体調不良の原因にもなります。
体の抵抗力も落ち、肝臓にも負担がかかります。
規則正しい食事と生活は、肝障害や肝炎を進行させないためにも必要なのです。
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肝臓の働きとは・・・
肝臓は重さが約1.2㎏ある、人体で最も大きな臓器で、栄養の代謝や数百種類の有害物質の解毒などを休みなく行っている人体の化学工場です。
肝臓は毛細血管のかたまりで、肝動脈と門脈から血液が流れ込み、肝臓からは肝静脈へ血液が流れ出し、一方で胆汁がつくられています。
肝臓で処理される血液の量は、毎分約1.5リットルで1日に約2160リットルで、ワインボトルに換算すると実に2880本にもなります。
この血液量からも、肝臓の代謝と解毒の働きが、生命活動を支えていることがわかります。
その働きは、次の3つに分けられます。
食べ物から得た3大栄養素、タンパク質、糖質(炭水化物)、脂質を化学反応によって体に必要な物質に分解・合成・貯蔵する、代謝機能を担っています。
3大栄養素をはじめ、ビタミンやミネラルなどのさまぎまな栄養素を体内にとり入れており、これらの栄養素はそのままの形ではエネルギーになったり、筋肉などの組織になったりすることはできません。
体内で人間の体に適した物質に分解・合成・貯蔵され、体の要求に応じて血液中に送り出されてはじめて、生命を維持する栄養素になるのです。
こういったあらゆる物質の代謝の中心になっているのが、肝臓です。
肝臓は、体内にできたアンモニアなどの老廃物や、体外から入ってきた有害物質、薬の成分などを分解し、排出しています。
病院で薬をもらうと、ほとんどの薬は1日に3回飲むように指示されます。
一定の時間がたつと、薬が体内から消えて効力がなくなるためです。
これは、薬やアルコールが、有害物質として肝臓の解毒作用により体外に排泄されているからです。
体内で吸収されたアルコールの約5%は、呼気や尿中に排出されますが、残りの90%以上のアルコールは肝細胞で解毒されます。
脂肪の消化に不可欠な胆汁を、胆管から十二指腸に分泌するのも肝臓のたいせつな機能です。
脂肪の消化に不可欠な胆汁酸は、肉などの食べすぎで処理する脂肪がふえすぎると、結果的に発がん物質になる2次胆汁酸までふやし、大腸がん増加の原因をつくることがあり、これは、体は、バランスがくずれると本来持っている働きが裏目に出て、みずからを傷つけるように働いてしまうことがある、その一例です。
肝臓の働きはこれだけではありません。
ほかにも、
・古くなった赤血球、不要になったホルモンを分解する。
・赤血球に必要な鉄分を貯蔵し、血液をつくるのに利用する。
・ビタミン類を貯蔵したり、活性化したりする。
・肝臓にある免疫細胞が、免疫成分を出して血液中の細菌を排除する。
これら200以上の働きがあるといわれています。
肝臓がダウンすると、有害物質が排除されずに脳などに回り、生命は危険な状態に陥ります。
肝臓はその危険をあらかじめ回避するため予備の細胞をたくさん持っており、そのため、大きいのです。
肝臓は、みずからの再生能力にも目をみはるものがあります。
手術などで75~80%を切除されても約4カ月後には元の大きさに戻り、機能も回復するほどです。
肝臓病になって肝細胞が次々に壊れても、なかなか自覚症状があらわれずに代謝と解毒の働きを行っていけるのは、このすぐれた予備能力と再生能力があるためです。
このようながまん強さから肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれているのです。
それだけに、自覚症状があらわれたときには肝臓病はかなり進行していることになります。
これは、眼球や皮膚が黄色く染まる「黄痘」という自覚症状によって肝臓病に気づく人は全体の約30%で、70%の人は健康診断などで偶然に肝臓病を発見される、というデータからもうかがえます。
代謝には多量のどタミンが必要なことから、肝臓は、ビタミンを一時的に蓄える貯蔵庫でもあります。
鶏などのレバーにビタミンが豊富なのはそのためです。
肝臓の解毒作用が低下し、分解されないアンモニアなどの有害物質が脳に回ると、昏睡などの意識障害を起こす「肝性脳症」の症状があらわれることがあります。
処理する脂肪がふえると、悪玉腸内細菌によって、胆汁の中にがんを発生させる2次胆汁酸がふえて、大腸がん増力ロの原因になるといわれています。
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肝臓病の原因と種類・・・
肝臓病はその原因によってウイルス性、アルコール性、薬剤性などに分けられます。
病状は肝炎(肝臓に起こる炎症)、肝硬変、脂肪肝などに分類されます。
肝臓病は、この原因と病状を組み合わせて「ウイルス性肝炎」「アルコール性肝硬変」などとされます。
肝炎は、大部分がウイルスが原因で起こり、そのウイルスは現在までにC型、B型など5種類が見つかっています。
ウイルス性肝炎は急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎に分けられます。
肝炎は、6カ月以内に治れば急性肝炎、肝臓の炎症が6カ月以上つづくと慢性肝炎と分類されます。
慢性肝炎の原因はC型肝炎ウイルスが約60%、B型肝炎ウイルスが約20%、自己免疫性肝障害、代謝性肝障害(ウィルソン病)などです。
劇症肝炎は、急性肝炎が急激に悪化し、肝細胞が広範囲にわたって破壊される肝炎で、死亡率が70~80%に上る恐ろしい肝炎です。
年間5万~20万人が発症し、急性肝炎の40%がA型肝炎由来です。
A型肝炎のウイルスは、感染者の便中に排泄されたウイルスが野菜や飲料水などを経由して感染する経口感染です。
潜伏期間が2~6週間、そのあとに38度以上の高熱、全身の倦怠感、吐きけ、食欲不振など、急性肝炎の初期症状があらわれます。
これが1週間ほどで消えると、白目や皮膚、粘膜が黄色みを帯びる黄疸の症状があらわれます。
黄疸は約4週間つづき、体内にA型肝炎ウイルスの抗体ができるとおさまります。
急性肝炎の約30%、慢性肝炎の約20%、劇症肝炎の約40%がB型肝炎ウイルスによるものといわれています。
感染ルートはほとんどが母子感染で、母親がB型肝炎ウイルスの感染者なら、約95%の確率で、産道を通過する赤ちゃんに感染します。
輸血による感染は近年、ほとんどありません。
注射、ハリ治療、入れ墨、セックスなどで、B型肝炎ウイルスの感染者の血液や体液にふれても感染します。
B型肝炎では、キャリア(ウイルスに感染しているが、肝障害があらわれていない人)の10%が慢性肝炎を発症し、残りの約90%は肝炎を起こさないまま一生を終えます。
進行したB型肝炎は安静にして食事療法を積極的に行い、薬で治療します。
C型肝炎ウイルスのキャリアは全国に200万人以上いるといわれ、そのためC型肝炎は「21世紀の国民病」といわれています。
C型肝炎はわが国の急性肝炎の約20%、劇症肝炎の約50%、慢性肝炎の約60%を占めています。
半数は輸血や血液製剤、半数は昔受けた予防注射やハリ治療などによる血液感染です。
性行為による感染はほとんどありません。
また、出産の際の母子感染は2%以下です。
C型肝炎ウイルスに感染すると、約40日間の潜伏期間ののちに、急性肝炎を発症します。