歯周病と糖尿病や歯ぎしりなど・・・

歯周病と糖尿病や歯ぎしりなど・・・

糖尿病は歯周病のかかりやすさの因子と考えられています。

歯周病は、見えない歯周ポケットのなかに有害な細菌がたくさんすんでいて、それが絶え間なく歯のまわりの組織に炎症を引き起こす病気ですが、糖尿病患者の場合には、外から侵入する細菌を食べる白血球のはたらきが弱くなっています。

このため、短期間のうちに重症の歯周病にすすんでしまう可能性が高いのです。

糖尿病患者の場合には、歯肉の炎症も目立ったかたちであらわれます。

また、膿が歯のまわりの組織内にたまって急に痛くなる歯周膿瘍をひんばんに起こします。

歯周病が重症にすすみやすいばかりではありません。

糖尿病の患者さんの場合には、手足にケガをしたときに傷の治りが悪いのですが、それと同じように、歯周病のために生じた傷の治りも悪く、治療に対する反応もよくありません。

糖尿病は歯周病を起こす直接の原因ではありませんが、歯周病をひどくする因子です。

ですから糖尿病の人は、健康な人より何倍も歯周病に対する予防を心がける必要があるのです。

また、ほとんどの人が眠っているあいだや昼間でも、無意識に歯をくいしばることがあります。

また、ギリギリと歯ぎしりをするくせのある人も少なくありません。

どのような理屈かははっきりしていませんが、このくいしばりや歯ぎしりも歯周病を悪くする因子であることがわかっています。

歯ぎしりやくいしばりは、精神的なストレスが原因であるとされています。

歯ぎしりやくいしばりが病的に激しい場合には、自己暗示などの方法を試みます。

どのような場面でくいしばるかを調べ、目につきやすいところに目印を貼りつけておいて、目印シールが目についたら、くいしばっていないかどうかを反省するというような方法を試みることです。

あるいは、歯ぎしりやくいしばりの弊害を少なくするために、歯の表面をおおう透明なプラスチックのマウスピースを装着するということもひとつの方法です。

かみしめの習慣がない場合でも、かむ力が歯に悪い影響を与えることがあります。

かぶせたり、詰めたりする歯科治療や、抜歯、事故、ひどい虫歯などのために歯のかみ合わせが急に変わることがありますが、そのような場合に、ある特定の歯に特別強い力が集中することがあります。

これにかみしめや、寝るときの姿勢などの悪い要素が重なることもあります。

このような場合には、歯周病にかかっていなくても歯がぐらぐら揺れはじめることがあります(咬合性外傷)。

プラークコントロールがしっかりできている人の場合には、かみ合わせを調整すれば、このぐらぐらはすぐに治ります。

ただ歯周病がこれに重なると、ことは重大で、ふつうの歯周病では考えられないスピードで、歯を支える骨が溶けてしまうのです。

歯ぐきから出血したこともない歯が、急に揺れはじめたら咬合性外傷を疑いがあります。

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歯周病と唾液の質と量・・・

「歯の質が弱い」という人や、「女は子どもを産んで歯がダメになる」という体験談もよく耳にします。

実際、歯のエナメル質は人により、そのかたさはさまざまです。

しかし、俗に「歯の質」といわれている質のちがいは、じつはなによりも唾液のちがいです。

唾液の量や唾液に含まれる抗菌成分は人によってずいぶんちがいます。

また、歯のかたさ、すなわちミネラルの結晶の状態も唾液によって左右されます。

唾液は刺激によって分泌され、その量は一日約一リットルといわれていますが、人によりあるいは同じ人でもよくかめば唾液がたくさん出ますし、かまなければ唾液は少ししか出ません。

また女性は、男性にくらべて唾液の量が少ない(刺激時の比較で男性の八五パーセント)のですが、さらに閉経後には唾液の分泌量が減少することが知られています。

分泌量ばかりではなく、唾液の質が人により大いにちがうのです。

歯にくっついたプラークを中性にもどそうとする性質を緩衝作用といいますが、この唾液の緩衝能力は人によって、ときと場合によってちがいがあります。

そしてさらに重要なことに、唾液には細菌の増殖を抑制する抗菌作用があるのです。

唾液の量がなんらかの原因で少ない人は、虫歯になりやすい人です。

口のなかを洗い流す能力が劣っているばかりではなく、分泌量が少ないと、一般にプラークを中和する能力も低くなってしまうのです。

もちろん、細菌が増えるのを抑制する力も劣ります。

歯にくっついたプラークが産生しつづける酸によって歯のカルシウムやリンが溶け出し虫歯になるのですが、唾液はこのプラークを通してカルシウムやリンを歯のなかに送り込む働きもしています。

食事をとってから時間がたてば、プラークからつくられる酸の量は減少し、唾液の緩衝能力のために歯をとりかこむ環境は中性にもどり、ふたたびカルシウムやリンが歯のなかにとり込まれます。

ミネラルがきれいな結晶になった歯は容易に虫歯になりません。

生えたばかりの永久歯が虫歯になりやすく、大人が虫歯になりにくいひとつの理由はここにあります。

睡眠中はほとんど唾液が分泌されないため、もし寝る前にジュースを飲むくせがあるなら、夜通し口のなかでは歯の表面からミネラルが失われます。

糖尿病の人は、食事をしなくても唾液のなかにグルコースが分泌されるため、要注意です。

唾液の性質によって歯石のでき方も人それぞれです。

歯肉から上に見える歯石は、すぐに害になるものではありませんが、歯肉の炎症を起こしやすいので、このような歯石のできやすい人は、ふつうの人よりもひんばんに歯科医院で管理してもらうようにします。

唾液のうち下の前歯の内側近くから出てくる唾液には、たくさんのリンとカルシウムイオンが含まれています。

このため、下の前歯の内側には歯石ができやすく、唾液から二酸化炭素が奪われると、唾液のなかのイオンはいっそう歯に沈着しやすくなります。

ですから、長時間のランニングをする人や、鼻が悪くて口で呼吸する習慣のある人はふつうの人より歯石ができやすいことが知られています。

また鼻の悪い人の場合には、どうしても上の前歯の歯肉の外側が乾いてしまうので、唾液のよい影響を受けることができず、歯肉の炎症を起こしがちのようです。

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