認知症の進行を遅らせる介護は?
認知症の人は重症になるまでは何とか自分でやりたいという意欲はあるんですね。
ですので、本人の意欲を尊重して、世話をする人が体を動かすのを手伝って体をできるだけ動かすようにすることで、進行を遅らせることができるそうなんです。
何かしたいという意欲は、大脳皮質の内側で脳幹の周囲にある大脳辺縁系が担っているんです。
この部分は、大脳の古い皮質で、人間に進化する前の動物として生きていくために必要な機能を持った部分なんです。
そしてですね、アルツハイマー病はアセチルコリンが関与していると考えられているんです。
実際に、アセチルコリン分解酵素阻害薬(アセチルコリンの分解を阻害してアセチルコリンをふやす薬)であるアリセプト(エーザイ株式会社の商品)が、その進行を遅らせる効果があって、よく使われているんですね。
アセチルコリンは記憶機能に関係していると考えられているんです。
しかし、意欲や情動に関係する大脳辺縁系は、アセチルコリンと関係のないノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンなどが関与しているんです。
アルツハイマー病になっても、普通はこれらの脳内物質は欠乏もしていないですし、分泌障害も起こしていないんです。
ただし、病気が進行すれば、脳細胞がどんどん死んでいくので、その部分も働かなくなっていくんです。
適切なストレス刺激は、ノルアドレナリンを刺激して、注意力、意欲を喚起します。
ですので、認知症の初期にはその負担が本人にとって少しはストレスになっても、なるべく自分の力でできることはやらせるほうがいいんですね。
そうした適切なストレス刺激は、認知症の進行を遅らせると考えられているんです。
ある程度不快なストレスが加えられるほうが大脳機能にとって好ましいんですね。
不快なストレスは大脳の覚醒のレベルを上げて、集中力を上げるんですね。
そうした刺激がないと、大脳が眠った状態からなかなか覚醒しないんです。
脳がきちんと目覚めない状態が続くと、頭がいつもボーッとした状態で過ごすことになるんですね。
世話をされすぎて何もしなくても必要なことが事足りるといった生活よりも、できることはちょっと不快なストレスが加わっても、自分でやったほうが大脳にはいいんですね。
ですから、認知症の介護をするときには、食事もスプーンで口に入れてやる、移動は車椅子を使う、など、介護を徹底してしまうと、かえってボケを進行させることにもなるんです。
世話をされるほうは楽だろうと思うかもしれませんが、それは逆の話で、実は介護者が楽なんです。
自分で何かをさせようとすると、かえって手間暇がかかって大変で、介護者がやってあげたほうが時間もかからず楽なんですね。
例えば、自分で食べようとしない人に何とか手を添えてでも自分で食べさせようとしたら、時間もかかって大変ですよね。
介護者が口にさっさと食べ物を入れるほうが手がかからないんですね。
そうなると、自分の意思でなく、口に食べものを詰め込まれることになるんですね。
また、杖をついてよろよろとしながらでも何とか歩いてトイレに行けた人でも、介護施設に入れると歩けなくなることが多いようです。
それは付き添って歩かせるとなると、介護するほうも大変だからなんですね。
そこで車椅子を使ってしまうと、すぐに歩けなくなってしまうんです。
それでトイレが間に合わないようになると、オムツになりますよね。
歩けなくなり、オムツになるとさらにボケが進行し、すぐに寝たきりになってしまうんですね。
自分でできることは多少大変でストレスであっても、やらせるようにすることが大切なんですね。
良くなることは難しいかもしれませんが、ボケの進行を遅らせることはできるんですね。
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認知症には適度なストレスが良い?
認知症の親の姿を見られたくないから表に出さない人がいますよね。
散歩などもさせずに家の中に囲っておくとボケはどんどん進んでしまうんですね。
少しでも外に出て太陽の光を浴びて歩くだけで、セロトニンが活性化して脳によい刺激を与えるんです。
また、デイケアに行くのは、そのために着替える、バスに乗って施設に行く、デイケアに来ている人たちと接したり、介護する人たちと接したりしますよね。
それが脳のよい刺激になるんですね。
一日中、家にいれば着替えもせずにボーっとしているんです。
外に出るためにはそれなりの服装に着替えなければなりませんし、それだけでも気を使い脳の刺激になっているんですね。
あまり親しくない人たちと一緒に何かをしたり、話したりするのも緊張しますよね。
デイケアに行くだけでも、ストレスになりますよね。
疲れるかもしれませんが、それが脳の刺激にもなり、そのストレスが適度であればいいわけなんです。
ストレスが過度でなければ良いんです。
デイケアに行くといっても週に一度いってもいいですし、毎日行ってもいいんです。
その人の状態を見て決めてくださいね。
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認知症は記憶障害でも自尊心はある?
またですね、ものを覚えられない、すべて忘れてしまうからといって、人間としての自尊心が失われてしまっているわけではないんですね。
下の世話をされれば、恥ずかしいという気持ちはあるんです。
赤ちゃんと違いますから、認知症であっても嫌がって抵抗したりするんですね。
粗相をしてそれを取り替えてあげようとしているのに、抵抗すればなぜ抵抗するのかと思うかもしれませんよね。
また、粗相を怒れば、なぜ怒られているかがわからなくても、相手が怒っていることはわかるんです。
すぐに忘れてしまうんですから、なぜ怒られているのかがわからないんですね。
ですので、きちんと説明して笑顔を心がけて、普通の人間としてのコミュニケーションが必要なんですね。
認知症が進行していけば、話してもきちんと意味はわからなくなるかもしれません。
でもですね、一定のレベルまでは相手の人間性を尊重して接することで、相手にも通じるんですね。
世話する人の気持ちが十分に通じれば、相手も安心するんですね。
それが進行を遅らせることになるんですね。
怒ってばかりいたのでは、相手はどんどん萎縮して心を閉ざしてしまうんです。
ただ、世話をすることに疲れてイライラして大声で言いたくなることもありますよね。
子どもであれば叱ることでいい方向に修正されることもありますが、認知症の人は叱ってもなおらないんですね。
子供返りしているように見えても自尊心はあり、人間としての尊厳の部分は失われてはいないんですね。
自分がおむつをつけていることを恥ずかしく思う気持ちは残っているんですね。
相手の自尊心を尊重することを忘れてはいけないんですね。
世話する側が穏やかな態度で接すれば、認知症の人も穏やかな表情になり、それほど心が乱れた状態にはならないんですね。
記憶障害が進行しても、心に対する配慮が大切なんですね。
認知症の人の感情を尊重することで、その進行を遅らせることもできるんですね。
認知症についていろいろ調べてみましたので、参考になれば幸いです。