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目標のコレステロール値とは・・・
脂質異常症の治療目標は、コレステロールなどの脂質値を改善することにあります。
しかし、目的はあくまでも動脈硬化を起こしたり進行したりするのを防ぐことです。
つまり、脂質異常症は動脈硬化の大きな危険因子なのです。
その危険因子となるものは、実はほかにもいろいろあります。
脂質異常症と並んで、重大な危険因子として証明されてきたものに、高血圧、喫煙、糖尿病があげられます。
これらの危険因子が合併すると、動脈硬化の進行にいっそう拍車がかかってしまいます。
これら動脈硬化を進める危険因子を総合的に改善すれば、動脈硬化を予防し、その進行を遅らせることができます。
脂質異常症の患者さんが治療で目標とする脂質値は、医師が患者さんごとに、冠動脈疾患を起こす危険因子の数や程度を判断して決めます。
治療法については、一次予防、二次予防ともに食生活や運動などの生活習慣を改善することが重視されています。
一次予防では、患者さんが生活習慣を実際に改善してみて脂質値がどう変化したかを医師が考慮したうえで、患者さんの動脈硬化性疾患のリスクに応じて薬物治療をとり入れるかどうかを検討します。
二次予防では生活習慣の改善とともに薬物療法を検討します。
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食べすぎを改善してコレステロールを増やさない・・・
動脈硬化を防ぐ大きなポイントの一つは、LDL(悪玉)コレステロールをふやさないことです。
そのためには、ただコレステロールが多く含まれている食べ物だけを控えればいいと思われがちです。
しかし、それだけでは不十分です。
なぜなら、コレステロールの大半は体内でつくられ、その原料は食物に含まれる脂肪や炭水化物、タンパク質からできてくる物質だからですりつまり、全体の食事量が多ければ、総コレステロールも増加してしまうのです。
ですから、最も重要なのは食べすぎないこと、いいかえれば1日の食事の総エネルギーを適正な量に抑えることです。
そのうえで、さらにコレステロールが多い食品や、コレステロールをふやしやすい脂肪などが多く含まれる食品を控えることが大事です。
適正な食事量とは1日に必要なエネルギーのことです。
1日に必要なエネルギーは、性差、年齢、身長、体垂、活動量などによって違います。
目安としては、下に示した計算法で算出できます。
標準体重は、国際的にも広く使われている指標であるBMI(ボディマスインデックス)による計算法が一般的です。
標準体重1㎏あたりに必要なエネルギーは、活動量の程度によって遠いますが、デスクワークなどの軽作業の場合は通常25~30kcalを目安にします。
たとえば、体重60kgの人なら、1日あたり1500~1800kcalの食事量に抑えるようにするわけです。
ただ、標準体重を維持できる量が適正なエネルギー量ともいえるので、体重や肥満度を見ながら、1日に必要なエネルギー量を加減します。
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抗酸化作用の食べ物で酸化を防ぐ ・・・
活性酸素による動脈硬化を防ぐには、酸化因子と防御因子のバランスを保つことが必要です。
酸化因子とは、ストレスや大気汚染などのことです。
現代人は、こうした酸化因子がきわめて多い環境で生活しています。
そこで、体外から防御因子をとり入れるのです。
人間が紫外線に当たると活性酸素が生成され、炎症が起きますが、光合成を行う植物には活性酸素を除去する強力なメカニズムを備えているものがあります。
こうした植物を食品としてとると、体内で抗酸化物質として働きます。
ビタミンEやビタミンC、カロテン、赤ワインブームのきっかけとなったポリフェノール類などがその代表例です。
ただし、抗酸化物質はそれぞれ役割が異なるので、いろいろな野菜や果物を少しずつ食べることが理想です。
そのようにして、働きの異なる抗酸化物質をバランスよくとれるように毎日の食生活に気を配ることが、LDLコレステロールの酸化や動脈硬化を予防することにつながります。
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中性脂肪の増加で動脈硬化が進む・・・
血液中のコレステロールや中性脂肪がふえすぎると、動脈硬化が進みます。
特に注目すべきなのが、LDL(悪玉)コレステロールの量です。
LDLコレステロールは、血液中に発生する活性酸素によって酸化トDトに変えられると、血管の内側を傷つけて、動脈硬化や血栓のもとになるのです。
中性脂肪の増加も動脈硬化の原因になります。
中性脂肪がふえすぎると、血液中にレムナントという物質が生じます。
このレムナントは、血管の内壁に直接もぐり込んで動脈硬化や血栓のもとをつくるのです。
また、中性脂肪は内臓脂肪に変わりやすく、ふえすぎると内臓脂肪型肥満になりやすいという点で二次的な弊害を生み出します。
小腸を包んで支えている膜を腸間膜といいますが、主にこの腸間膜にくっついてたまった体脂肪が内臓脂肪ですじ中性脂肪は小腸で合成されるため、ふえすぎるとその周りに蓄積されやすいのです。
この内臓脂肪がふえすぎた状態を、内臓脂肪型肥満と呼びます。
内臓脂肪型肥満になると、血糖値を調整するインスリンの働きが悪くなったり、血管が広がりにくくなって、下の血圧が上がったりします。
さらに、最近の研究では、内臓脂肪がたまってくると、その脂肪細胞から、さまぎまな種類の生理活性物質が血液中に分泌されることがわかってきました。
動脈硬化を進めるPAI-1や、血圧を上げるアンジオテンシノーゲン、免疫機能に異常を引き起こすアディプシンなどの物質が分泌されるのです。
ただ、こうした有害な働きをするものがある一方、体に蓄えられた脂肪が適量であれば、傷ついた血管の壁を修復するなどの働きを持つアディポネクチンのような善玉の生理活性物質が分泌されます。
内臓脂肪型肥満であることに加えて、中性脂肪値が高めだとか、血圧が高め、血糖値が高めなどが重なると、メタポリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と呼ばれる状態を招きます。
ひとつひとつの症状は軽めでも、動脈硬化がぐんと進みやすく、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす確率が高く
なります。
遺伝的なものを除いて、脂質異常症の原因には、暴飲暴食や不規則な生活が関係していることが多いものです。
また、内臓脂肪は軽い運動を継続して行うことで減らすことができます。
ほとんどの場合、薬などを飲む前に、生活習慣の見直しをはかれば改善することができるのです。
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