大人の歯が抜けるのは病気・・・

大人の歯が抜けるのは病気・・・

大人の歯が抜けるのは病気なのですから、ちょっと注意すれば、この病気は防ぐことができます。

病気というのはどんなものでも、つねに不平等なもので、ガンだって心臓病だって、食べるものに注意していてもかかる人がいるかと思えば、お酒もタバコもという生活をつづけても病気知らずの人もいます。

虫歯や歯周病も同じで、食生活に注意していてもかかりやすい人がいます。

甘いものを食べてロクに歯みがきもしないのに虫歯にならない人もいます。

同じ年齢の人よりも早く、つぎつぎに歯を失って、50歳代の若さで総入れ歯になってしまう人もいます。

こうなると、当然、心もからだも人よりも早く老けてしまいます。

老化というのもじつに不平等なものです。

最近の研究では、重症の歯周病にかかる危険のある人を、遺伝子を調べることで見つけることができる、とされています。

そのような便利な方法は、まだ実用化されていませんが、子どもとその両親をいっしょに診察していると、将来のかかりやすさを予測することができます。

50歳代で総入れ歯という人も、50歳になって突然歯の病気になって、歯を失ってしまうわけではありません。

歯周病の場合は、早い人で中・高校生ぐらいのころ、遅い人では、20~40歳になって、かかりはじめの兆候があらわれます。

ほとんどの人は、現在、このかかりはじめの歯周病に注意を払っておらず、30歳代、40歳代とその場しのぎの治療を受けて、気づいたときには、もうかなり手遅れになっているのです。

歯周病対策に入る前に、虫歯という病気について知っておく必要があります。

虫歯の場合も歯周病と同じで、治らないほどひどくなってから目をつけているのです。

このために虫歯の治療というと、削ったり詰めたりすることをイメージしてしまいますが、虫歯という病気は、ぽっかりと穴が開いてしまうまでに長い道のりがあるのです。

風邪をひいてもほとんどの人は、数日で治ってしまいますが、こじらせて肺炎になってしまうことがたまにあります。

虫歯の場合は、多くの人がこじらせてしまっているのです。

プラーク(歯についた細菌のかたまり)と歯の表面は、リンやカルシウムなどのイオンが出たり入ったりしています。

飲食をするたびに、プラークは酸性にかたむき、歯の表面からミネラルを奪います。

夜になると唾液が、プラークを中和し、ミネラルを歯のなかにもどしてくれます。

これをくり返して歯の表面は虫歯に侵されにくい、しっかりとした結晶に成熟していくのです。

このバランスは、プラークをつくる細菌の種類や唾液の量や性質、そして細菌を育てる飲食物によって変わります。

たとえば頻繁に食べ物を口にする場合には、歯の表面のミネラルが奪われつづけるのです。

虫歯の治療というのは、バランスを取りもどす作業で、細菌の蓄積を減らせば、その種類も変わります。

唾液の少ない人は、その対策が治療です。

のどが渇いてジュースを飲む回数が多い人は、ジュースをお茶にかえることが、もっとも効果的な治療法ということになります。

とくに乳歯や生えたばかりの永久歯は、表面が未熟で、簡単にミネラルが奪われてしまいます。

しかも成長期は、大人よりも飲食の回数が多く、甘いものが欲しい時期なのです。

この時期には、人それぞれのバランスを調べ、それに応じて対策をとります。

飲食の回数や糖分のとり方をコントロールしたり、歯の性質を強くするためにフッ化物を使ったり、唾液が十分に出るようにかんで食べる練習をしたりという対策によって、バランスを回復するのです。

甘いものをやめられない子どもの場合は、虫歯にならない甘味料を処方することも有効です。

これが虫歯の治療です。

虫歯に穴が開いてしまった場合にも、削って詰める治療は、最小限にとどめます。

従来は、歯に接着する材料がなかったために、いったん削る以上は、悪くなりそうなところをあらかじめ余分に削って詰めてしまうことが推奨されていました。

しかし今日では、歯に接着する材料が使えるため、歯を削る目的がこれまでとは変わってきているのです。

このような虫歯の治療とコントロールによって、虫歯のない永久歯列を育てることができたら、20歳代からの歯周病対策は、とても楽になります。

20歳代のときから、自分が歯周病にかかりやすい体質をもっているのか、虫歯にかかりやすいのかどうか、大きなトラブルをかかえる前に自分のからだのことをもっとよく知っておいたほうがよいのです。

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歯が抜けるのは歯周病・・・

歯ぐきの治療は20年くらい前までは、ぐらぐらになった歯を揺れないようにつなぎ合わせたり、歯を抜いて入れ歯を入れたりすることでした。

しかし、入れ歯というのは、どんな名人が作ってもしょせんはつくりもの、自分の歯とはとうてい比較にはなりません。

治療すると病気にかかりにくくなるならいいのですが、歯を失って治療費をかけても病気のかかりやすさは変わりません。

そして、また具合が悪くなって歯科医に行くと、さらに歯がなくなって、お金もなくなり、病気の不平等は、年をとるにしたがって拡大します。

年をとって歯が抜けるのは自然な老化現象などではないと専門家がいい出すようになりました。

現在では多くの人が、歯がぐらぐら揺れるようになったり、抜けてしまうのは、歯周病という病気が原因なのだということを知るようになっています。

健康な大人の口のなかには親知らずを除いて28本の歯があります。

厚生省が歯の病気について本格的な調査をはじめた昭和32年、平均の健全歯(治療のあとや虫歯のない歯)は15.7本でした。

この健全歯は年々減って、平成5年の調査では、2.4本になっています。

この40年、日本人の平均寿命は、男が13年、女が15年ものびているのです。

40歳の平均余命(あと何年生きられるか)をみても、男で7年、女で9年ものびています。

ところが、歯の病気対策は、そのころからたいした進歩がありません。

健康な歯の数、治療した歯の数、失った歯の数を年齢順にならべてみると、年をとるにつれて歯の数は減って、60歳になると半分以上の歯がなくなっています。

昔からの思い込みは、統計上の事実なのです。

「年をとると歯がなくなる」という現状はなにも変わっていません。

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自覚症状ない歯周病・・・

病気のかかりはじめに、痛みや熱が出るという病気なら、だれだってその症状で病気にかかったことを自覚します。

はっきりと不快なサインがあるなら、だれでもすすんでその対策をとりますが、歯周病の場合には、かなり悪くならなければ、目立った自覚症状は出てきません。

歯周病の場合には、骨が溶けはじめても痛みも熱も出ないのです。

かみしめたときに歯が揺れる、あるいは指で押すと動くというような自覚症状が出てきたときには、すでに単純な歯ぐきの病気ではなくなっています。

これが歯周病のこわさです。

では、歯周病はそのかかりはじめにどのような兆候があって、どのような症状を示しながら、どのように進行するのか。

歯槽膿漏というとよく聞きますが、歯槽とは、歯の根がそのなかに植っているあごの骨の槽(くぼみ)のことです。

その歯槽から膿がもれ出してくるようすを病名にしたのが歯槽膿漏です。

歯のまわりから膿が出る症状は、歯周病がかなり進行した状態であらわれます。

膿と呼んでいる黄白色の臭いのある粘液(化膿性溶出液)は、変性した白血球を大量に含む液体です。

歯ぐきのなかで、からだを外敵からまもるのは、好中球と呼ばれる白血球です。

好中球は外敵の侵入に対して血管から大量にしみ出して、外敵を食い殺します。

膿は、戦い疲れた白血球のかたまり、つまり戦傷兵のようなものです。

外敵というのは、この場合は、歯と歯ぐきのすき間に侵入し増殖しつづける有害な細菌のことです。

いやな臭いのする(味もある)膿を感じるのは、歯周病がかなり進行してからのことです。

膿は、歯肉のなかにたまって歯肉が腫れ、かなり痛むこともあります。

これは、歯肉のなかにたまった膿が引き起こす急性症状(歯肉膿瘍)です。

いままでは、この急性症状で来院したときから歯周病の治療にとりかかっていました。

痛みや熱のようなはっきりとしたいやな症状がなければ、病気を自覚せず、病気の自覚のない人を治療するのはむずかしいことです。

歯科医院では、腫れた歯肉にメスで切り口を開け膿を外に出し、消毒してくれます。

これは歯周病の治療ではなく、歯肉膿瘍に対する応急処置です。

これで歯周病がよくなったと思ったら大まちがいなのです。

歯と歯ぐきのあいだのミゾ(歯肉溝)に有害な細菌がたまり、そのミゾが深いドブに変わっても、そのままにしておくと、もっと深い場所に膿がたまる(歯周膿瘍)ことになります。

それまでに目立った症状がなく、カゼをひいたり疲れたときに歯ぐきが腫れているていどかもしれません。

人によっては、歯ぐきに膿がたまって激しい痛みに苦しむということもあります。

歯のまわりの組織にたまった膿は、腫れと痛みをがまんしていると、組織に穴を開けて外に流れ出します。

膿のたまりはじめにひどく痛み、時間がたって膿が外に出てしまうと、痛みはなくなります。

こうして、いったん症状は軽くなりますが、このような急性症状を示す時期に、歯を支える組織が急激に破壊されます。

こうした痛みをなんどかくり返すと、歯を支える骨がなくなり、歯を失うところまで破壊がすすんでしまいます。

重度の歯周病でも、鏡で見た外見上は、そうひどそうには見えません。

健康なときには歯は、骨とハンモック状の繊維に支えられていますが、それがすっかりなくなってしまい、失った支えのかわりに、ハリボテのような歯肉が歯の根を隠しています。

このふくらんだハリボテ状の歯肉と根のあいだには、ハンモックのかわりに深いミゾができています。

この深くなったミゾを歯周ポケットと呼んでいます。

歯周病の原因は、歯と歯ぐきのあいだにできてしまった歯周ポケットのなかの細菌をどうにかしなければ、歯を支える組織の破壊はつづきます。

歯を支えるハンモックは、たとえ少々破壊されても、タテの方向には耐えます。

ところがぐらぐらしている歯を横につないでしまうと、これまでにない方向に力が加わるようになります。

削ってじゃまなものをかぶせた分だけ歯ぐきを清潔に保つことも困難になります。

歯をつなぎ合わせることは、原因の除去ができたあとの後始末にすぎず、原因をそのままにして後始末だけをしてしまうと、一見、治ったようで、かえって歯を支える組織を破壊することになるのです。

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