内臓脂肪がたまりやすい人と・・・
内臓脂肪は、日々の生活のなかで徐々にたまっていくものです。
仕事に追われ、食事時間や栄養バランスに気をつけたり運動をしたりする余裕がないと、いつのまにか肥満状態に陥ります。
厚生労働省の調査では、中高年男性の2人に1人、女性の5人に1人が、すでにメタポリックシンドロームの疑いがあると判明しました。
男性は、ウエストが太くなり体型が変わってきても女性ほど気にしない傾向があるうえ、基礎代謝の盛んな20代の頃と同じような食事を続けていることも多く、肥満になる人が増加しています。
女性は、内臓脂肪のたまった、お腹ポッコリのリンゴ型肥満よりも、お尻や脚などの下半身に皮下脂肪がつく洋ナシ型肥満が多いとされています。
でも、安心してはいけません。
なぜなら、40代以降になると、女性にも内臓脂肪がたまりやすくなり、高脂血や高血圧など、メタポリックシンドロームの危険性が急激に高まるからです。
原因は女性ホルモンの減少で、特に閉経すると、内臓脂肪が急に増加することもわかっています。
閉経していなくても、更年期を迎える頃から太らないように注意が必要です。
2008年4月から、40歳以上74歳以下の人を対象にした特定健診(通称メタポリックシンドローム健診)と特定保健指導も始まりました。
これは、厚労省により義務づけられたもので、メタポリックシンドロームの概念を取り入れた健診と保健指導を行うことによって、生活習慣病を予防・改善していこうというものです。
健診では腹囲計測、BMI測定、血液検査などを行い、その結果によって「情報提供」「動機づけ支援」「積極的支援」の3つの階層に分けられます。
各階層ごとに、医師や保健師、管理栄養士による指導を受けることになります。
また、一般的な検診には含まれませんが、CTスキャンという機械を使って、体内を撮影すると、内臓脂肪がどれくらいついているのかを自分の目で確かめることができます。
気になるときには、医師に相談が必要です。
<メタボリックシンドロームの診断基準>
①お腹周りのサイズが男性85cm、女性90cm以上(立位でおへその位置で測ったもの)
②血清脂質異常、血圧高値、高血糖
①と②のうち2項目以上が当てはまるときにメタボリックシンドロームと診断されます。
スポンサードリンク
アディポネクチンとは・・・
脂肪の細胞からは、アディポサイトカインと呼ばれる、さまざまな働きをもつ生理活性物質が分泌されています。
なかでも、注目を集めているのがアディポネクチンというホルモンです。
アディポネクチンは、インスリンの働きを助ける、血管を広げる、脂肪の代謝を促す、血管を直接修復するといった作用をもっています。
この働きによって、血糖値と血圧を下げ、中性脂肪を減らし、動脈硬化を防ぐことができるのです。
アディポネクチンの他にも、体にできた腫瘍などを壊死させ、必要な炎症反応を起こさせるTNF-α、血圧を上昇させて低血圧を防ぐ働きをするアンジオテンシノーゲン、血液を固まりやすくして出血を止める働きをするPAI-1、中性脂肪がたまると脳に働きかけて食止併を抑え、エネルギー消費を促すレプチンなど、脂肪細胞から多くの生理活性物質が分泌されています。
どれも体の機能に欠かせないものですが、内臓脂肪をため込みすぎると、アディポネクチンが減る一方で、TNF-α、アンジオテンシノーゲン、PAI-1などは増えすぎてしまいます。
生理活性物質の分泌量のバランスが崩れると、糖尿病や高血圧症などを起こしやすくなり、動脈硬化も進行させてしまいます。
また、レプチンは、中性脂肪がたまり始めると分泌されますが、内臓脂肪を過剰にため込んでしまうと逆に分泌量が減少します。
その結果、食欲を抑えたり、エネルギー消費を促す効果が低下し、さらに中性脂肪がたまりやすくなります。
アディポネクチンの減少には、直接・間接の悪影響があり、直接的には、動脈硬化を進行させてしまうことがあげられます。
脂肪細胞から分泌されたアディポネクチンは、血管内を漂い、血管壁にもろくなった部分があると、そこを修復します。
ところが、内臓脂肪をため込んでアディポネクチンの分泌量が減少すると、血管壁が十分に修復できなくなり、弱く、もろい血管になってしまうのです。
このほか、インスリンの働きを助けたり、血圧を下げたりする働きを持つ善玉のアディポネクチンですが、分泌量が減ってしまっては活躍できません。
また、アディポネクチンには膿瘍細胞の増殖を抑える働きもあるとされており、分泌量が少ない人は、がんにかかりやすいという報告もあります。
内臓脂肪を減らし、アディポネクナンを増やす食品で分泌量を高めておくことが大切です。
アディポネクテンの作用を助けるサプリメントもあります。
一方、間接的悪影響では、アディポネクチンが減ったことで他の生理活性物質がどんどん増えてしまうことがあげられます。
TNF-αの増えすぎで、膵臓から分泌されるインスリンの効きが悪くなり、分解されなかった糖分が血液中にあふれて血糖値が上昇します。
高血糖のドロドロ血液は固まりやすく、血栓をつくつて血管内壁に付着します。
また、血液を固まりやすくするPAI-1の分泌量も増えているため、血栓ができる可能性が高まります。
そして、低血圧を防ぐ働きをするアンジオテンシノーゲンの増えすぎにより、血圧が上昇し、血管を痛めてしまうのです。
このように直接・間接の影響が重なった結果、もろくなった血管、ドロドロ血液、血栓、高血圧が勢ぞろいすることになります。
動脈硬化が急速に進行し、血管に血栓が詰まったり、血管が破れたりする危険性が高くなるのです。
メタポリックシンドロームの診断基準にあてはまっていなくても、過食やアルコール類の飲みすぎ、運動不足などで内臓脂肪をためつつある人は、アディポネクチンがだんだん減ってきていると考えられます。
特に、中性脂肪値がすでに高い場合は、分泌量は少なくなっていると考えられます。
なぜなら、アディポネクチンには脂肪代謝を促す働きがあり、その分泌量が十分でないために中性脂肪値が高くなっていると判断できるからです。
また、タバコを吸う人やストレスをため込みやすい人も、アディポネクチンを減らしやすいので注意が必要です。
動脈硬化症などの重大な病気を予防するためにも、アディポネクチンの分泌量を測ってみるのもよいかもしれません。
両親のどちらかががんや心筋梗塞などの病気でなくなっている人は、生まれつきアディポネクチンが少ないという報告もあり、体質が遺伝する可能性も考えられています。
このような遺伝的な低アディポネクチン血症の発見にも役立ちます。
スポンサードリンク
内臓脂肪を減らす方法とは・・・
メタポリックシンドロームの原因になる内臓脂肪ですが、意外にも、皮下脂肪より減らしやすいという特徴をもっています。
皮下脂肪は一度つくとなかなか落ちにくいのですが、内臓脂肪はつきやすく、落ちやすいのです。
お腹周りがすでにでっぷりしていたとしても、あきらめてはいけません。
内臓脂肪の蓄積は、消費したエネ~ギーよりも、食べることで得たエネルギーのほうが上回った結果で、過食と運動不足が最大の原因です。
まずは、自分の食生活と運動量を振り返るようにすることが大切です。
そして、食事の適量を守り、意識して体を動かしていれば、確実に内臓脂肪が減り、心筋梗塞や脳梗塞などの恐ろしい病気も遠ざけることができます。
最初から大きな減量目標を立ててしまうと、長続きしません。
BMI値が25以上の肥満の人は、まず、今の体重から5%減らすことを目標にします。
内臓脂肪は、体重を5%減らすと減少することがわかっているのです。
BMI値が適正になるまで、無理をせず、時間をかけて段階的に5%減量をしていきます。
減量と同時に筋肉が落ちないようにすることも必要です。
筋肉が落ちてしまうと、基礎代謝が低下するために太りやすくなり、減量効果も落ちてしまうからです。