ストレスホルモンの影響とはどんなもの?
ストレスを受けると、人間の脳や体にどのように影響するんでしょうか?
視床下部の室傍核(しつぼうかく)という場所にストレス中枢があるんですね。
まず、ここからホルモン(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が出るんです。
このホルモンが脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンを分泌させて、副腎皮質に刺激を与え、副腎皮質からストレスホルモンといわれる副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が分泌されるんですね。
視床下部→脳下垂体→副腎皮質という流れなんです。
ストレスホルモンといわれる副腎皮質ホルモンは、免疫抑制剤や抗炎症剤として使われているんです。
免疫とは外部から異物が体内に侵入したときに、異物と戦い排除する防御システムなんですね。
このストレスホルモンは、その免疫を抑制して働かないようにするんです。
では、なぜ免疫を抑制してしまうんでしょうか?
それは手強いストレスという相手に対して、無駄な抵抗をしないで時を待っているんですね。
白血球が異物などと戦うときには、腫れたり熱が出たりして体が消耗しますよね。
それらの抵抗をしないで、体が消耗するのを防いでいるんですね。
ストレスホルモンが出ているときには免疫が抑制されるので、風邪などもひきやすい状態になるんですが、短期間であれば問題はないんです。
ただ、ストレスホルモンが大量に出ている状態が長く続くとやはり問題が生じてくるんですね。
胃潰瘍、高血圧、糖尿病などの病気になりやすくなるんですね。
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ノルアドレナリンの働きとはどんなもの?
またですね、ストレスを受けるとノルアドレナリンが分泌されるんです。
それはストレス中枢とは別にストレスに反応する神経があるんですね。
それが脳幹の青斑核(せいはんかく)にあるノルアドレナリン神経なんですね。
不安、恐怖、意欲、闘争など「怖い」「苦しい」などといった刺激が入ったり、恐ろしい思いをすると、ノルアドレナリン神経からノルアドレナリンが盛んに分泌されるんです。
すると、大脳の覚醒レベルが上がり、交感神経が興奮するんです。
心拍数を増加させ脂肪からエネルギーを放出して、筋肉をすばやく動けるようにするんです。
これは恐ろしい目に会ったりすると心拍数が上がって、即座に闘うか逃げるかという行動に移ることができる態勢に入るようになるんです。
こうした反応を即座に起こさせるのが、ノルアドレナリン神経なんですね。
危機的な状況に直面したときに即座に対応できるようにするのがノルアドレナリン神経で、生き延びるための本能的なものなんですね。
ノルアドレナリンの分泌が適度であれば、注意と集中の状態を作ってくれるんです。
しかし、ノルアドレナリンが過剰になると、緊張しすぎて、かえって状況に応じた力を発揮することができなくなってしまうんですね。
逆に、ノルアドレナリンが少なすぎると、注意や緊張感のないぼんやりした状態になってしまい、勉強や仕事に力を発揮することはできなくなるんです。
定年退職した途端に、無気力になる人がいますよね。
仕事や人間関係のストレスから解放されるのは良いのですが、外からの刺激やストレスがなくなると、ノルアドレナリン神経の働きが鈍くなってしまうんですね。
ストレスがかかる状況であっても、その場で逃げるか、戦うかしてすぐに終わらせるようにする。
カーッと怒ってもすぐにおさまるというように短時間で処理できれば、そのストレスは問題にはならないんです。
というか、外からの適度な刺激によってノルアドレナリンが適度に分泌されている状態は、注意力も集中力も高まっている状態なんですね。
でもですね、短時間で終わりにしないで、怒りや不安、恐怖などの状態を長く引きずると大変なんです。
血圧や血糖値が高い状態が続き、免疫力が低下して、さまざまな体の病気を引き起こしたり、うつ病を引き起こしたりすることになるんですね。
外からの刺激によるストレスでは、ストレスホルモン(副腎皮質ホルモン)と、ノルアドレナリンが同時に分泌されるんですね。
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ドーパミンの効果とはどんなもの?
快、不快ということでいえば、快の刺激ではドーパミン神経が働き、不快な刺激ではノルアドレナリン神経が働くんです。
ある刺激で快を感じているというのは、それによってドーパミンが出ているんですね。
その刺激で快を感じるにしても、何度か繰り返しているうちに、だんだん同じレベルの刺激では快が得られなくなり、さらにもっと強い刺激を求めるようになるんです。
快を感じる神経はもっともっとと欲求し、満たされないと不快になり、その刺激がなければ困るようにさえなってしまうんです。
そうなると依存症なんですね。
つまり、ドーパミン神経は快の回路であると同時に依存症の回路でもあるんですね。
こんな話を聞いたことはありませんか?
覚醒剤を使うと、気分が高揚して頭が働くように感じるって・・・
でもですね、繰り返し使っていると、同量の覚醒剤ではその効果は得られなくなるんですね。
薬の量は増えていき、その刺激がなければ頭が働くどころか、何も手がつかない状態になってしまう・・・
それが依存症なんですね。
麻薬などは極端ですが、タバコをやめられないニコチン依存症も同じなんですよ。
ニコチンはドーパミン神経を刺激するので、なかなかタバコをやめることができなくなってしまうんですね。
このドーパミン神経をどうコントロールするかが大切なんですね。
そして、それをコントロールするのにかかわっているのがセロトニン神経なんです。
ドーパミン神経は中脳の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)にありますが、そこにセロトニン神経が抑制をかけるんですね。
このように、ドーパミンは本能的な快に関わるんですが、さらに人間らしさを司る前頭前野の意欲や好奇心とも関係しているんです。
ドーパミン神経は期待していたより結果的に大きな快が得られると、さらに興奮するんです。
このときに、得られるだろうと期待する快の量と、行動した結果、実際に得られた快の量との差が大きいほど、ドーパミン神経は興奮するんですね。
しかも、その興奮が強いほどドーパミンが流れやすくなるんです。
すなわち、期待以上に快が大きければ大きいほど、ドーパミン神経が興奮するんですね。
それが繰り返されればこの回路が強化され、ドーパミンが流れやすくなるんです。
意欲はこのドーパミンの回路と関係していると考えられているんです。
勉強や仕事をするのが多少大変でも一所懸命がんばるのは、達成できたときの快を期待しているからなんですね。
一所懸命に勉強すればいい成績をとることができる、いい成績を取れれば親にほめられる、さらに希望の学校にも進学できるといった快が期待できますよね。
一所懸命に仕事をして結果を出せば、上司からほめられ、高い報酬や出世も期待できますよね。
快を期待すればこそ、人間は当面大変なことでストレスを受けるようなことであっても、頑張ってやり通すこともできるんですね。
この回路を興奮させるような体験が重なれば重なるほど、意欲も出るんです。
この回路が強化されれば、ストレス」が多少強くなっても、そのストレスをバネにして頑張ることができるともいえるんですね。