肝臓病の70%がウイルス感染・・・
「肝機能の異常」というと、原因はアルコールと思われがちですが、日本人の場合は、肝機能の異常のほとんどは酒より肝炎ウイルスが大きく関係しています。
肝硬変の患者さんが、5年の観察期間中に肝がんを引き起こす割合を示したものが次になります。
①C型肝炎ウイルスのキャリアで、酒を飲まない、肝硬変の人は28%。
②C型肝炎ウイルスのキャリアで、大酒飲みの、肝硬変の人は44%。
③C型肝炎ウイルスに感染していない、大酒飲みの、肝硬変の人は5%。
たくさん酒を飲む人でも、ウイルスに感染していない限り、肝がんになりにくいことがわかります。
別の調査で、262人の肝硬変の患者さんの原因を調べたところ、次の結果が明らかになりました。
・C型肝炎ウイルスが原因は46%。
・B型肝炎ウイルスが原因は7%。
・C型肝炎ウイルス+アルコールが原因は18%。
・B型肝炎ウイルス+アルコールが原因は2%。
・アルコールのみが原因は12%。
適量を守って飲んでいる限り、酒は肝疾患を促進させる要因にはなりにくいのです。
しかし、肝炎ウイルスの感染者が酒を飲むと、肝疾患の程度が悪化するおそれがあります。
たとえば、B型肝炎やC型肝炎のウイルスに感染しても症状がはっきりしない人や、母子感染などでウイルスを持っていてもまだ発症していないキャリアの人が、感染に気づかないうちに多量の酒を飲むと、肝炎を発症したり、症状の悪化を促進する要因になったりします。
アルコール性肝炎をへて肝硬変にかかった人が酒を断つと、生存率が2倍も向上するという報告があります。
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大量な長期の飲酒の肝障害・・・
酒を長期にわたって大量に飲んでいると、肝臓に障害を起こします。
肝障害の原因は、酒ではなく、大酒飲みに特有の栄養の不足や偏りにあるのではないかという意見が強かった時期がありました。
しかし、動物実験で、どんなに栄養のバランスのとれたエサを与えておいても、アルコールを大量に与えると、かなり高い確率で肝障害が起こることが確認されました。
それからは、「酒を長期間飲みすぎることこそが肝障害の主な原因である」という考え方が主流を占めるようになりました。
長期にわたる飲酒が引がき起こす肝障害は、①アルコール性脂肪肝、②アルコール性肝炎、③アルコール性肝硬変、に大別できます。
①から順に、肝臓の状態は悪くなります。
①アルコール性脂肪肝
アルコールのとりすぎで肝臓の働きに変調をきたして、肝臓に中性脂肪がたまり、大きく肥えてしまった状態です。
②アルコール性肝炎
酒の飲みすぎで急速に肝臓が相当に傷めつけられた状態で、ふだんから酒をよく飲む人が、宴会つづきなどで、いつもよりも大量のアルコールをとったときに起きる急性の肝障害です。
症状としては、黄痘、食欲不振、吐きけ、嘔吐、全身のだるさ、腹痛、下痢、体重減少などがあり、これを繰り返すと、アルコール性肝硬変にまで進行していきます。
③アルコール性肝硬変
その発症率は年々増加しており、すべての肝硬変の中に占める割合は1961年の統計では1%でしたが、1971年には30%を占めて、現在は25~35%とみられています。
ただしアルコール性肝硬変は、ウイルス性肝硬変と遠い、断酒をつづけていれば、すぐに改善の方向に向かい、命を落とすまでには至りません。
つまり、アルコール性の肝障害は、酒とのつきあい方で命運が分かれるのです。
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肥満で脂肪肝になるNASH・・・
内臓脂肪の一種、脂肪肝は、禁酒やカロリー制限で回復するため、以前はそれほど深刻に考えられていませんでしたが、最近、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)という病気が知られるようになり、この病気でも脂肪肝が起こることがわかりました。
NASHは、50~60代の肥満がある女性や、血糖値が高い人に多く見られます。
アルコールを飲まない女性にも起こり、放置しておくと、脂肪肝から肝炎、肝硬変や肝がんへと進行するおそれのある、恐ろしい病気です。
NASHのいちばん大きな要因は、肥満で、女性なら「ウエスト・ヒップ比」が0.8を超えると危険とされています。
ウエスト・ヒップ比はウエスト(おへその少し上)の数値をヒップ(おしりのいちばんふくらんだ部分)の数値で割った比率です。
はかるときはまっすぐ立ち、リラックスした状態で軽く息を吐いてから計測します。
肥満を防ぐために、まず気をつけたいのは、当然ながら食生活です。
「アルコール」「甘いもの」「油」を気をつけるようにします。
一方、積極的にとりたいものは、タンパク質です。肉や魚の動物性タンパク質でも、大豆などの植物性タンパク質でもかまいません。
ただし、脂肪をとりすぎないよう、鶏肉ならささ身、魚なら自身の魚などを選ぶようにします。
脂肪を燃やすためにはビタミン類も必要です。
タンパク質とビタミン類をしっかりとると同時に「脂肪を燃やすための運動をする」「夜食を避ける」「食べたら歩く」、これがNASHを悪化させない生活の基本です。