相続の承認放棄の熟慮期間の起算点

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相続の承認放棄の熟慮期間の起算点

最高裁昭和59年4月27日判決
民集38巻6号698頁、判時1116号29頁

<事実>

被相続人Aには相続人である3人の娘Y1、Y2、Y3がいる。

Aと娘たちとはほとんど交渉もなく、入院中にY2が3回ほど見舞いにおとずれ、死亡のさいにも臨席したが、Y1、Y3には死亡後に知らされたほどである。

Y1らは、Aが生活保護や医療保護を受けていたので、積極財産はまったくないと信じ、また請求を受けた本件連帯保証債務の存在もまったく知らなかった。

Aの死後およそ1年経過してから、Aの保証債務1000万円余の金員の支払を命じる原判決の正本がY1らに送達された。

そこでY1らは、その後1ヶ月以内に家裁に相続放棄の申述をなし、その20日ほどのちに申述が受理された。

これに基づいてY1らは、Aの債務の相続を前提とするXの本訴請求は失当であるとして控訴した。

原審はY1らの主張を認めた。

すなわち、相続人が被相続人の死亡の事実を知った時でも、積極または消極の遺産の存在を認識していない場合には、いまだ熟慮期間は進行しない、本件では原判決の正本がY1らに送達されたときに初めて債務の存在を知ったのであるから、この時から熟慮期間が進行する、その時から3ヶ月内になされたY1らの相続放棄の申述は有効適法であるから、Xの本訴請求金を支払うべき義務はない。

そこで、債権者Xが上告した。



<判旨>上告棄却

「3ヶ月の期間(以下「熟慮期間」という。)を許与しているのは、相続人が、相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った場合には、通常、右各事実を知った時から3ヶ月以内に、調査すること等によって、相続すべき積極及び消極の財産(以下「相続財産」という。)の有無、その状況等を認識し又は認識することができ、したがって単純承認若しくは限定承認又は放棄のいずれかを選択すべき前提条件が具備されるとの考えに基づいているのであるから、熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実を知った時から起算すべきものであるが、Y1らが、右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、Aに相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、Aの生活歴、AとY1らとの間の交際状態その他諸般の状況からみて当該Y1らに対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、Y1らにおいて右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、Y1らが前記の各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間はY1らが相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」

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