自筆証書遺言の判定は筆跡の鑑定

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自筆証書遺言の判定は筆跡の鑑定

新潟地裁昭和45年1月14日判決
判時599号58頁

<事実>

被相続人Aの遺言により相続分を否定された養子Xが、他の相続人であるY等に対して遺言の無効を訴えたもの。

なお、被告であるY等は筆跡に関しては、筆記に際して、遺言者の握力が低下し手が震えていたため、被告の一人が遺言者の手を支持して欲する文字を書かせたとの事情を述べ、また、遺言の効力の判定に際しては、遺言者が原告に対して離縁の訴えを提起したが敗訴した等、諸般の情況証拠を総合的に判断すべきものであると主張した。



<判旨>認容

「(本件遺言の自書の要件につき)証拠をみると、証人Bは本件遺言書には亡Aの筆跡に似ているところと似ていないところがあり全体として亡Aが自書したものかどうかは断定できない趣旨の証言をしており、また鑑定人Cは本件遺言書末尾の「A」なる氏名の文字はA本人の筆跡ではなく被告Y1の筆跡と同一である旨の鑑定をしている。

そして他に本件遺言書記載の文字が亡Aの筆跡であると断定している証拠は全くない。

右各証拠を総合すれば、本件遺言書はその筆跡からみて亡Aが自書したものとはとうてい認め難く、この点からしてたとえYら主張のように本件遺言書の作成とその内容が亡Aの真意に出たものだとしても同人が自書したものと認め難い本件遺言書は自筆遺言証書としての方式に違反しており無効というほかない。

右の点につきYらは自筆遺言証書における自書か否かの判定は単に筆跡のみでなく・・・諸般の事実を総合考慮して判断すべきであるという。

然し自筆証書による遺言は、各人の筆跡がそれぞれ固有の特徴を有し容易に他人の模倣を許さないということから、遺言者の真意を自書(即ち筆跡を残す)という方式によって確保しておこうという制度であるから、自書か否かの判定はまず第一に筆跡の識別によるべきであり、その識別が不明確な場合はじめて他の情況証拠による判定の方途を用いるべきであろう。

してみれば本件の如くその筆跡からみて遺言者本人の自書と認められないばかりか、むしろ遺言内容に利害関係を有する第三者の筆跡と認められるような本件遺言書をもって自筆遺言証書と解すべき余地はないものと考える。」

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