帰化した外国人が作成した押印のない自筆証書遺言

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相続がやって来たら相続に関する判例>帰化した外国人が作成した押印のない自筆証書遺言

帰化した外国人が作成した押印のない自筆証書遺言

最高裁昭和49年12月24日判決
民集28巻10号2152頁、判時766号42頁

<事実>

遺言者Aは来日して約40年になる無国籍の白系ロシア人で、遺言書作成の1年9ヶ月前に日本に帰化している。

Aの遺言書には、署名はあるが押印がなされていなかった。

遺言の執行者Xより遺言者の相続人Yらに対し、遺言書が真正であることの確認等を求めて提訴した。

なお、原審の認定した事実によれば、Aは、片言の日本語を話すほかは主としてロシア語または英語を使用し、交際相手も少数の日本人を除いてはヨーロッパ人に限られていたが、自らの印鑑は所有しており、不動産の処理に際してはこの印鑑を使用していたとの事情がある。

原審は請求を認容したため、Yらより上告した。



<判旨>上告棄却

「原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、本件自筆証書による遺言を有効と解した原審の判断は正当であって、その過程に所論の違法はない。

論旨は、採用することができない。」

<原審の判旨>

「本件遺言書には遺言者の押印がない。

しかし、右遺言書は次の理由により有効である。

文書の作成者を表示する方法として署名押印することは、我が国の一般的な慣行であり、民法968条が自筆証書遺言に押印を必要としたのは、右の慣行を考慮した結果であると解されるから、右の慣行になじまない者に対しては、この規定を適用すべき実質的根拠はない。

このような場合には、右慣行に従わないことにつき首肯すべき理由があるかどうか、押印を欠くことによって遺言書の真正を危うくするおそれはないかどうか等の点を検討した上、押印を欠く遺言書といえども、要式性を緩和してこれを有効と解する余地を認めることが、真意に基づく遺言を無効とすることをなるべく避けようとする立場からみて、妥当な態度であると考えられる。

これを本件についてみるのに、・・・(遺言者の)生活意識は、一般日本人とは程遠いものであったことが推認される。

このような点からすれば、同女が本件遺言書に押印しなかったのは、サインに無上の確実性を認める欧米人の一般常識に従ったものとみるのが至当であるから、押印という我が国一般の慣行に従わなかったことにつき、首肯すべき理由があるといわなければならない。

・・・次に、欧文のサインが漢字による署名に比し遥かに偽造変造が困難であることは、周知の事実であるから、本件遺言書の如く欧文のサインがあるものについては、押印を要件としなくとも、遺言書の真正を危うくするおそれはほとんどないものというべきである。

以上の理由により、本件遺言書は前説示に従い有効とするのが相当である。」

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